未曽有のコロナウイルス感染拡大が日本を世界を脅威にさらし、様々な制限を外から受けながら、自分でも制限をかけながら過ごしてきた期間でした。サッカーというスポーツがありふれた日常の上に成り立っていることを、当たり前の環境が当たり前でなくなったときに身をもって教えられたような気がします。
誰もが経験したことのない事態に戸惑い、不安になり、先がみえなくなることがあったでしょう。けれど、先のことを考えすぎるあまり、自分が何をすべきかということまでわからなくなってはいけない…そう自分に言い聞かせて、今できることを考え続けました。それは、「とにかく自分で考えろ」と、指導者として歩みだして間もない頃にあるコーチから言われた言葉と重なりました。一人の人間ができることなんてたかが知れていますが、緊急事態宣言の発令から国民が団結して危機意識が高まったように、一人一人の意思ある行動がとても大切なんだとわかりました。新たなチャレンジをしたり一歩を踏み出したりするときには、勇気や覚悟が試され、リスクもついてくるものですが、まずは自分の現在地(置かれている状況)を理解することと受け入れることから始まるのだと思います。未来がどうなるのかは誰にもわかりませんが、起こりそうなことや考えられる事態を想定することは誰にでもできます。それが先を見据えて動いていく行動力であり、不測の事態でも冷静に対応できる柔軟性につながると感じます。何も浮かばない状況でも考える、自分の頭で模索する。これらを繰り返していくうちに思考が外に向けられ、そこで初めて自分が求めていた答えのヒントが得られる。最初から視線を外に向けても、自分が本当に探しているものは見つからない…というのが私の考えです。
それなら、サッカー部の活動が可能な限り安全に、安心して再開できる準備をすることです。そして、指導できない時間を何に替えて磨いていくかということです。この2点に重きを置いて過ごしてきました。周りにとっては当たり前のことを当たり前に遂行し、違和感なくスムーズにみんなが以前の状態に戻れるように。今までにない壁にぶつかったとしても、どうしようかと悩める時間があっていいと思いますし、「こうしてみよう」と自分で考えたのなら思い切ってチャレンジしてみるのもいいと思います。
Jリーグ発足前のプロ化の準備検討委員会で、反対勢力の意見に対して当時の川渕チェアマンが発した言葉を思い出しました。「時期尚早と言う人間は100年経っても時期尚早と言う。前例がないと言う人間は200年経っても前例がないと言う。仕事というものは、できないことにチャレンジをして、できるようにしてみせることを言うんだ。」
皆が安心して暮らせる生活があって初めてサッカーを心から楽しむことができます。元通りにはなりにくい現状からENJOY SOCCERを導き出すとすれば、ウイルスとの共存に向き合ってチャレンジしていく思考や姿勢へとシフトしていくことが重要なのかなと感じます。一人一人の感染予防対策とチームとしての一致団結を前提に。
本学サッカー部は、いよいよ6月16日(火)より段階的に、再開いたします。再開後に部員の元気な姿が見られることを楽しみにしています。
監督 中田洋平