2025年、サッカー部創設10周年という節目の年に関西1部リーグで戦う挑戦権を得ました。強豪揃いのカテゴリーで上位進出と定着を目指して立ち向かいましたが、結果は最下位で2部降格となりました。まずは、今シーズンを最後まで戦い抜いてくれた部員とスタッフ、マネージャーに心から感謝申し上げます。そして、思うような結果を残すことができず、非常に悔しい苦しいシーズンになってしまったこと、どのような立場であれチームを勝利に導くことができなかったことに責任を感じています。
3度目の昇格となる1部リーグは、やはり前回(2023年)に体感した時と同じく刺激的で魅力的な、また厳しくて難しいステージでした。簡単に勝てる試合は一つもなく、だからこそ試合を迎えるまでの全員のあらゆる準備と試合当日の柔軟性が必要でした。準備があるから即興性がより効果的になり、準備があるからチームの絵が繋がります。何よりも重要なのは、勝利に向かう強い意志から準備が生まれるということです。意志のない者、弱い者が勝利を目指すエネルギーは小さく、つまりは同じ方向へ向かう統一感とチーム全体のエネルギーに比例します。全員が勝利への渇望とエネルギーを全開にして準備を整え、厳しいステージ(当日)の試合を戦えたのか、という点でもっと追求できる部分があったと課題を感じています。
本気で目指すべき場所や到達したい目的地があれば、人は人を巻き込み、助け合い、「意志」を示します。私は、「意志」があるから準備をするのだと思います。「意志」があるから選択肢が増え、選択肢が増えるから最適な決断ができるのではないか、ということです。
例えば、ボールを失いたくないからボールを下げる(前進の意志なし)のと、相手ゴールに向かえなかったからボールを下げる(前進の意志あり)のと、同じプレーでも質は全く違います。部室をきれいにしろと言われたからきれいにするのと、次の人が使いやすいようにと思いを巡らせてきれいにするのとでは質は全く違います。ただの雑用だと思って与えられた役割をこなすのと、チームのために必要な仕事だと思って役割をまっとうするのとでは質は全く違います。要するに、自分から見える視線だけでなく他の人から見た自分はどう映るのか、チームにとって自分はどんな影響を与えているのか…といった自分を外から見る高い視座と意志の強さが個人そしてチームの成長に大きく影響します。
このようにチームづくりとは、先頭に立つリーダーたちだけが背負って統率するのではなく、一人一人の個人の自主性と主体性、そこから生まれるコミュニケーションによって生み出されるものだと思うようになりました。基本は組織ではなく個人なのです。いかにして部員一人一人の自主性を引き出し、リーダーではなく一人一人が主体的に行動していけるか。この点でのチームづくり・マネージメントが来年以降の大きな課題であると受け止めています。
私個人としては、人生を激変させるほどの刺激が詰まった1年でした。日本サッカー最高位の指導者ライセンスの受講を通して、現場の実践経験や人脈の広がりはもとよりサッカーというスポーツをあらゆる側面から見つめ直しました。そして、自分自身を見つめ直す時間にもなりました。自らの「意志」で進み、挑戦し、指導者の可能性という選択肢が広がりました。受講生同士で切磋琢磨することで、まとまろうとしてまとまった集団ではなく、目指す場所や頂へ共に進むからこそ自然と結束した仲間となりました。どんな場であっても日本サッカー界を引っ張る存在になっていくこと…これが与えられた使命でした。
人生の中でこれほどまでサッカーについて考え、自分自身について考えたことはありません。そして、脳がちぎれるほど考える1年を過ごして感じたことがあります。
「量」は必ず「質」に転化する、ということです。
「量」によるトライ&エラー、成功と失敗、効率と無駄を通るからこそ「質」を追求できる。つまり、「質」は止まって得られるものではなく、動き続けることで自然と手に入るものなのではないかという考えに行き着きました。
初めから要領よく、効率よく進められる物事はありません。事前に必要かどうかを吟味することは大切ですが、地道な努力と様々な試行錯誤を重ねて初めて余分なものを削ぎ落とすことができます。余分なもの(無駄)というのは、自分が通ったから得られる経験であり、そう考えると無駄は無駄ではなくなります。何が言いたいかというと、「量」は必要だということです。トレーニングの量、勉強の量、動く量、考える量、準備の量。その中でも、私は「考える量」に関しては誰よりも時間をかけ、地道に取り組んできた自負があります。それでもまだ足りず、もっと「量」を増やす必要があると感じています。
「Less is more」
では、これからどこをどう削っていくのか。「量」を通ったからこそ、余分なものを削ぎ落として本当に大事なものを際立たせる。この「質」に転化していきたいと思います。もちろん「量」はあくまでも今現在の「量」で、これからも誰にも負けないぐらいの「量」を増やし、そこから「質」に転化していきます。
今シーズンの悔しい経験と結果、その中で手にした成功と失敗。それらをどう来シーズンへと繋げていくのかがとても重要です。
本学サッカー部の理念「選ばれるクラブに」。勝利を目指すだけでなく、勝ち負けには現れないスピリット(芸術や感動)をつかみにいくことで、理念に沿った「アグレッシブかつスピーディなサッカー」がより鮮明になっていくと思います。だからこそ、成功しても失敗しても新しい自分に刷新していく勇気を持ち、受けた恩を石に刻みながら、サッカーという理不尽な勝負事の世界で走り続けます。挑戦の先には道が開けると信じて。
最後になりましたが、サッカー部創設10周年の節目の年に、多くの方々より温かいご支援ご協力を賜りました。この場をお借りして厚く御礼申し上げます。
本学サッカー部の来シーズンの躍進にご期待ください。
中田洋平






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