日頃より関西福祉大学サッカー部の活動をご支援くださっている株式会社デイリーエッグ様、赤穂化成株式会社様、株式会社金海興業様。皆様の変わらぬご支援により、集中した環境でサッカーに向き合うことができました。この場を借りて、深く御礼申し上げます。
また、大学関係者の皆様、OBの皆様、保護者の皆様、地域の皆様、そして日々チームを支えてくれている中田監督、吉岡コーチ、那谷コーチ、杉本コーチ、北口トレーナー、中尾学生コーチ、山本をリーダーとしたマネージャー陣、主将の西尾をはじめとする選手たち、関西福祉大学サッカー部に関わるすべての方々に、勝利という形で恩返しできなかったシーズンであったにもかかわらず、変わらず声をかけ、背中を押し続けてくださったことを、私は決して忘れません。心より感謝申し上げます。
2025シーズン、Aチームを担当し、関西学生1部リーグを戦うという大きな仕事を任されました。
1部で戦うAチームを預かる。その任命を受けた瞬間から、この仕事が持つ重みと責任を強く意識していました。目標は、2022シーズンの順位を上回り「1部リーグに住む(定着する)」こと。
最低限のミッションは残留。
いや、それ以上に――
「関福大のAチームとして、何を示すのか」
それが問われる一年でした。
不退転の決意で、この仕事に挑んだことを、今でもはっきりと覚えています。
しかし、結果は残酷でした。
22戦3勝2分17敗、勝点11。得点16、失点57。12位。
1年での2部降格。
数字が、すべてを語っています。成果は、ありませんでした。
2024シーズンを支えた力のある4年生が抜けたとはいえ、指導初日から感じたのは、「さすが関福のAチームだ」と思わせる技術と強度の高さでした。中田監督からチームを引き継ぐにあたり、戦い方のベースや基準を大きく変えることはせず、まずは守備の安定を図る。そして開幕前3週間を目安に、攻撃へと着手していく。そうした計画のもとで、プレシーズンを進めました。
要求を一定水準ですぐに実行できる、サッカー理解の高い選手も多くいました。
だからこそ、起きている問題を柔軟に修正し、選手が主体となってチームを作り上げていく方向へ導くことができれば、結果につながる。そう信じて、日々のトレーニングに向き合っていました。
しかし――
プレシーズンから薄々感じていた得点力不足と守備の不安定さは、シーズンを通して改善できず、軌道修正すらできないまま終わってしまいました。
出口の見えないビルドアップ。
ミドルゾーンでの不用意なポゼッションによるボールロスト。
崩しのバリエーションとクオリティの不足、決定力不足。
守備の強度、連動、ボール奪取への執着心。
ゴール前で身体を張り、粘り強く守り切る組織的な強さ。
結果として、
何を武器にしているのか分からないチームを創り上げてしまいました。

これは、すべて私の責任です。
現場での指導力の不足。説得力と納得感を欠いたトレーニングの積み上げ。戦術の意図を、選手の判断につなげ切れなかったこと。「何を武器に戦うのか」「どうやって勝ちにいくのか」その道筋を示せず、選手たちを迷わせてしまいました。
問題を見立てる力、トレーニングに落とし込む力、試合中に修正する力。準備の質、決断の速さ、そして一貫した信念。これらが噛み合わなかったことが、今シーズンの結果に直結しています。チームマネジメントにおいても、多くの課題がありました。出場メンバーの固定化、競争の欠如。リーダーシップとフォロワーシップを育て切れなかったこと。敗戦を重ねてもメンバーが大きく変わらない状況は、選手のモチベーションとAチームへの帰属意識を、静かに、そして確実に奪っていきました。そこにあったのは、偽りの組織、偽りの平和、そして偽りの自分でした。
「勝たなきゃいけない」「上手くならなきゃいけない」そんな外発的な言葉に留まり、「自分たちが誰よりも本気で勝ちたい」「本気で上手くなりたい」という、内側から湧き上がる感情へと変換できなかった。だからこそ、今ははっきりと分かります。指導者である自分の本気度と姿勢こそが、すべての起点だったということを。勝ちたいという本能を呼び起こす空気づくりが、決定的に足りなかった。
試合後、ロッカールームで、ユニフォームを脱げずに座り込んでいる選手たちがいました。。
声をかけることもできず、ただ前を見つめている。悔しさなのか、怒りなのか、諦めなのか。
その表情を、私は見逃していました。彼らは試合中に何度も周囲に声をかけ、修正しようとしていた選手たちです。それでもピッチの中で解決できなかった。彼らの「考えようとする力」を、私は支え切れていなかった。
一方でシーズン終盤、連敗が続く中でも、トレーニングで声を出し、主将の西尾を中心として基準を示そうとする選手たちの姿がありました。選手たちだけでなくチームを支えるマネージャーも下を向かず常に未来を見据え笑顔を絶やさずできる全てをチームに注いでくれました。
勝敗とは別のところで、チームを前に進めようとする“半歩”が、確かに芽生え始めていた。その兆しを、もっと早く、もっと大きく育てるべきでした。「選手同士で、試合が終わってから言っても遅い。試合中に解決する」この文化を、根付かせなければならなかった。





私はこれから、何をどう変える指導者なのか。答えはシンプルです。「選手たちが、常に考える状況を設計する指導者」になる。声で動かすだけではなく、基準と構造で動かす。失敗を咎めるのではなく、失敗が必然的に次の学びへと変わる導線を敷く。選手が、成長を実感しながら、ここが自分の居場所だと思える環境をつくる。それは、居心地の良さだけを追い求める環境ではありません。
現役Jリーガーである谷本、奥村、竹中がトレーニングに参加してくれた際、彼らが口にしたのは、特別な言葉ではありませんでした。
切り替え、球際、強度。
当たり前のハードワークを、当たり前にやり続けること。
日々のトレーニングに、持っているすべてを懸けること。
4年間という限られた時間を大切にすること。
コミュニケーションや言葉かけなど自分たちで積極的に声を出してトレーニングを創り上げること。
上手い下手に関係なく誰にでもすぐに実践できることでした。
厳しい発言が浮くチームは弱い。成長できるかどうかは、自分たちが創り上げる環境と姿勢次第。それを、楽しみながら実現していく。楽しむとは、楽をすることではありません。自分自身を常に向上させ、苦しさも受け入れた上で、前向きに、熱量高くアグレッシブにプレーすることです。
今持っている力を、最大限に発揮させる姿勢を、チーム全体で整えていく。オン・オフを問わず、日常の「当たり前」を徹底する。小さな習慣と実践を、地道に積み重ねていく。心理的安全性を確保し、失敗を責めるのではなく、学びへと変え続ける環境をつくる。
関係の質が、思考の質を高める。
思考の質が、行動の質を高める。
そして行動の質が、結果の質を生む。
この循環を、意図的に、粘り強く回し続ける。それが、私が目指す自律型学習組織です。
小さな変化を拾い、挑戦を肯定する。変わろうとしている選手の兆し――
その「半歩」を、決して見逃さない。その積み重ねが、やがて文化になる。
私は、その土台をつくり続けます。
サッカーにおいても、目指す方向は明確です。オールハードワークができるアタッキングフットボール。誰かが楽をするチームではなく、全員が責任を引き受けるチーム。派手さはなくても、最後まで立ち続ける強さを持った集団をつくりたい。

「いい監督になるには、いいガイドになることだ」
「いい選手になるには、人間としての成長が欠かせない」
選手が試合中に考え、感じ、行動できること。その自立心を育て、試合中に表現できる“強さの本質”を引き出すこと。それこそが、指導者の役割です。
試合中に、選手同士で修正できるチーム。ベンチに戻った瞬間、次の改善が始まっているチーム。それには毎日のトレーニングが全て。それによってチームは形作られて情熱が脈を撃ち始める。それぞれの努力を掛け合わせたフットボールを創り上げる。
どれほど苦しい結果であっても、私は現場に立ち続けます。
毎日目をギラつかせリアリストの将になる。
理想論ではなく、現実から逃げず、
挑戦を説き、姿勢で示す。
経験は時に邪魔になる。過去の事例をアテにしない。
逃げず、誤魔化さず、積み上げる。
臆せず挑む冒険心を胸に劇的なシナリオを。ここからが、指導者としての新たな船出です。
ヘッドコーチ 西野誠




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