いつも関西福祉大学サッカー部を応援していただきありがとうございます。GKコーチの那谷(ぺぺ)です。まもなく関福大での5年目を終えようとしています。
 11月16日の関西学生サッカーリーグ2部最終節をもって、全てのカテゴリーの公式戦が終了しました。トップチームは必達目標であった1部昇格を果たし、Aサブチーム以下はそれぞれILでの大躍進を見せるなど、今年はどのカテゴリーも非常に素晴らしい成績を残してくれました。

 昨年までと変わったのは、私が関福大に来てからずっとあったC2チームが減ったこと。C2チームがなくなったことで、ABCチームの3カテゴリーとなり、担当を持たない私はGKコーチとサポートに専念することになりました。
 これまでC2チーム担当コーチとして、シーズンを終えるたびに安堵感に包まれていたように思います。「今年も何とか最後まで走り抜けられた」「何とか来年に繋げられた」「怒涛の日々がやっと終わってくれた」。ただ、今シーズンの始めに感じたのは、一緒に戦ってきたC2のメンバーと、彼らの担当コーチとして今年も一緒に戦いたかったという思いでした。これには自分でもかなり驚きです。関福大に来てからというもの、あれほどまでにC2チームというある種特別なカテゴリーに苦悩し続けてきていたのに、ここに来て寂しいと感じるなんて。
 昨年のC2チームは、開幕からドラマチックな試合で強豪大学を打ち破り3連勝、シーズン目標としていた2勝以上をいとも簡単に達成しました。当然上手くいかないことの方が多く、怪我人の発生や、就活・実習で人が揃わない、取り組みに熱量差あるなど、チームとして万全と言える状態は一度もありませんでした。それでも、多くの感動と試練を与えてくれた部員達には感謝しかありません。そんな彼らが次はどんな感動を見せてくれるのか、今年も一番近くで見てみたかった。今シーズン、サポートコーチとしてグラウンドに立っている時はずっと、身勝手な親心から「頑張れ頑張れ!皆がやれるってことを見せつけてくれ!」と彼らを応援していました。きっと、そんな感動をくれる部員たちだからこそ、そして苦悩した日々が私を強くしてくれたからこそ、私の指導者人生は輝いているのでしょう。だからこそ、その環境から離れることに寂しさを感じたのだと思います。
 さて、ここまで散々に寂寥感を述べてきましが、一つ断っておきたいことがあります。それは、これまでのC2チームで起きたあまりにも多すぎる頭痛の種、そのどれもが二度と、二度と経験したくないものであると。御免蒙りたいと!頭を抱えて嘆息する毎日。毎度理解を超えてくる数多の問題。思い出すだけで陰鬱な気持ちが蘇ってくるようです。しかし、刺激のない日々は退屈で、苦難のない達成から本当の感動は得られませんからね。どんな場所にいてもきっとまた、苦悩の日々に自ら落ちていくことでしょう。(笑)

 今シーズンのもう一つの変化、中学生くらいの時から漠然と憧れていたGKコーチとしての本格的な活動に、実はかなり胸躍らせていました。サッカーにおいてGKとは特別なポジションです。自陣ゴール前に位置し、色の違うユニフォームを身に纏い、唯一手でボールを扱うことを許された証であるキーパーグローブをつける。そんな特別なGKが私は大好きです。そして、深く関われば関わるほどに、GKの奥深さにまた胸を高鳴らせ、のめり込んでいきました。
 2010年南アフリカW杯、ドイツ代表マヌエル・ノイアー選手の規格外なプレーの数々は、それまでのGK像を吹き飛ばし、新時代の到来を告げました。無謀とさえ思えるほどの飛び出し、リスクをものともしない攻撃参加は衝撃的でした。
 GKは今でもゴールを守るのが最大の仕事だと言われるものの、シュートストップに優れた選手が、より足元の技術に長けた選手へとポジションを奪われることは、世界のトップでも起こります。チームスタイルによって求められるプレーが変わるためです。そして今シーズン、私はGK陣と関わっているうちに、「シュートストップは前提としてできなければならないから強みになりにくい」ということに気づかされました。(もちろんチームスタイルによりますが。)
 GKの象徴的プレーであるはずのシュートストップが強みにはなりにくい。凝り固まった私の頭は、これまでそのことに思い至りませんでした。では強みたりうるものは何のか。それはチームが「そんなこともやってくれるの!?本当に助かる!!」となるもの。例えばDF背後への飛び出しやクロスボール対応といった守備範囲の広さ。例えば、自陣深くからのビルドアップ能力や、圧倒的なロングフィード、パントキックなどによるカウンター機会の創出などでしょうか。もちろんシュートストップも、最後の最後ライバルと差をつけるためには強みとなります。それでも、飛んできたシュートは当然止めてもらわないと困るもので、それ以外でどれだけ影響を与えられるかが、強みのあるGKか否かの差なのだと考えるようになりました。現役時代に自分の強みが分からぬまま過ごしていたのも、ここに理解が及んでいなかったからだと今なら分かります。
 所属する組織によって求められるものや強みたりうるものが変化することは、何もGKに限った話ではないと思います。私も、GK指導を主として関福大に来ましたが、それは前提として、そこに何を上乗せができるのかも重要なのだと学びました。自分が今いる場所で何を求められているのか理解し、そして「前提として」何をすべきなのか、そこに強みとして出せる手札(経験)を正しく拾い表現すること。これは社会においても間違いなく重要で、それでいて多くの人が見失いがちだと思います。経験なきは手札になりえません。そういった意味では、C2チームでの苦悩の全ては私の強みとなりうるかもしれません。求められる前提部分や今ある強みの向上だけでなく、自らの強みの可能性を広げることに挑戦していかなければなりません。

 今シーズンは新しい役割を担うことで、これまでとは違った視点を得て、考えを整理し深める機会を得ました。固定観念に囚われがちな私ですが、できる限り頭を柔らかくし、これからも多角的な視点で物事に取り組んでいきたいと、改めてそう思います。
 来シーズンは、選手一人ひとりの強みの可能性を引き出し、向上していくことを目指します。そしてゆくゆくは「GKと言えば関西福祉大学」と言われるようなクラブにしていきたいと思います。

 最後になりましたが、日頃より弊部をご支援いただいている皆様に、この場をお借りして御礼申し上げます。
 これからも関西福祉大学サッカー部を、ゴールキーパー達を何卒よろしくお願いいたします。

GKコーチ 那谷ペペ侑平