新緑の芽吹きとともに始まった2024シーズンも、気が付けば冬の冷たい風が肌を刺す季節となりました。2年ぶりの投稿ということもあり過去のものを見返しました。1シーズン1シーズンをしっかりと振り返り、結構考えて作成していたのだなと私ながらに感心しました。今シーズンは直感を大事にして素直な気持ちを投稿したいと思います。

 2024シーズンを語る上で2023シーズンに少し触れておきたいと思います。2023シーズンは開幕から7連敗と厳しいスタートを切り、そこからも浮上のきっかけをなかなか掴むことができず低空飛行のままシーズンが過ぎていきました。もがき苦しみながら戦い何もできず無力のまま2部降格が決まったことを今でも鮮明に記憶しています。今までに経験したことのない辛さがありました。ため息の多い日々、追い詰められていく息苦しさ、何の根拠もない見せかけの自信、つくり笑顔、敗戦からくる選手との隔たりや信頼関係の崩壊により、指導者としての強い使命感、責任と覚悟が徐々にそぎ落とされていく感覚と向き合い耐え凌ぎながら戦っていたと思います。窮地に立たされた経験は何事にもかえがたい自分の経験となりました。
そういった経験から原点に立ち返る部分、新しいものを取り入れて変化を加える部分と様々な角度から自らを見つめ直し、最適解を導き出しました。そこからは軌道修正を繰り返ししっかりと地に足をつけ様々なことが進むべき道に着実に進んでいったように感じます。

 そして2024年は多くの試練と感動が詰まったシーズンになりました。

 Aチームは開幕から幸先の良い大勝スタート。2節に早々と土をつけられはしたものの連敗しない修正力を活かし走り続けました。後期には爆発的な得点力と堅牢無比な守備を披露。もちろん落としてはいけない試合もありましたが1年を通して確かな技術と戦術眼で主導権を握る想定内の試合運びができていたと思います。関福大は2部リーグを席巻する実力を発揮し、優勝は逃したものの必達目標である1年での1部リーグ復帰を見事に果たしました。
 さて私の担当するBチームは例年通りBチーム主体の関福大Ⅰ、AB混合の関福大Ⅱの2チーム体制でIリーグを戦いました。関福大ⅠはDiv1Aブロック4位(10チーム中)、関福大ⅡはDiv2Aブロック2位(9チーム中)という結果となりました。新たに加わった1年生、経験を積んだ上級生、それぞれが自分の役割を模索しながら、チームとしての形を作り上げていきました。
 今シーズンはレギュレーションが変わり関福大Ⅰに関してはDiv1残留という目標が私の中にありましたが、予想をはるかに超える選手たちの成長とパフォーマンスによって前期は開幕4連勝と好スタートを切り春の嵐を引き起こしその後も勢いが衰えることはなく8勝1敗の1位で前期を折り返しました。今年は秋の深まりを感じることなく、10月まで厳しい残暑が続きました。その中でも、選手たちはグラウンドで懸命に戦い続けました。暑さに耐えながらも、リーグ戦の終盤まで決勝トーナメント進出をかけた熱い戦いを繰り広げることができたことは、選手たちの粘り強さと情熱の証です。シーズン通して上位争いができ、自分自身にとっても選手たちにとっても非常に充実した、そして経験値をグッと高めることができた1年となりました。特に守備の改善と強化はチームとしても評価できるポイントだと感じます。Aブロックの中でも失点数は3位。失点を減らすことで試合を安定させてうまく自分たちの流れに持っていけたことが大きな勝因でもありました。得点数も1試合平均2得点以上のノルマはクリアして少しずつ攻撃の部分も昨年から改善されていると感じます。
もう一つの関福大Ⅱですが、こちらのチームは強固な守備が本当に素晴らしかったです。16試合で失点12とDiv2全チームで1番の少なさ。AB混合チームは毎年レベル差もありかみ合わずうまくいかない試合も多いのですが、今シーズンはAの選手たちが積極的にBの選手に声をかけている印象でそういったコミュニケーションがプレーの融合につながった要因かなと感じます。また公式戦という枠組みでIリーグをしっかりとらえてくれ、Div1昇格、決勝トーナメント進出という明確な目標も好成績につながった大きな部分かなと感じます。

 選手たちは自らの限界に挑みながら、互いを支え合う姿を見せてくれました。この結果は、選手一人ひとりの努力はもちろんのこと、吉田主将の信念やチームへの思い、そして「このチームをもっと強くしたい」という熱量が大きな原動力となったからこそつながった結果。吉田主将の人間的成長は、チーム全体の成長に直結していたと強く感じています。
一方で課題も浮き彫りとなりました。充実したシーズンとはいったものの1年を通して高いパフォーマンスを維持しながらプレーし続ける継続力は物足りなかったです。やはりパフォーマンスをしっかりと向上させること、フィジカルの強度やプレッシャーのかかる局面でのメンタルを維持する力、ハードな競争がある環境、これらを後期にもっとコントロールできればどちらのチームも結果は大きく違っていたのかなと感じます。来季はそういった細やかな働きかけにもこだわりたいと思います。

 私にとってのこの1年はというとサッカーに没頭する日常の連続でした。その中でも今後の人生に大きな影響をもたらすであろう出来事は指導者ライセンスの取得、シーズン佳境を迎えた中でのスタッフ間の話し合いの場でした。
 指導者ライセンスについてですが、今回私が参加した指導者養成講習会はA級ジェネラルという各年代に特化した指導をアマチュアトップレベルまで質を高く行うために指導力向上と新たな知識と価値観を習得し指導者のリーダーとなるライセンス講習会です。2020年にコーチからヘッドコーチとなり入部してくる選手の質も年々アベレージが上がっていき、さらなる指導力アップが求められてきました。2017年にB級ライセンスを取得して以降、中田監督、他のコーチ陣の指導から得る学び、様々な戦術本を読み漁りして増やしていく知識、他大学の指導者からの情報など、学ぶ機会を自ら模索しA級ライセンス取得へとチャレンジしないといけないなと思いつつも、なかなか一歩が踏み出せず、平凡に指導していく日々を過ごしてきました。
 踏み出せない理由、それは何か。トライアルという試験に不合格になるかもしれない、その試験を通過後の養成講習会の指導実践や口頭試験、筆記試験で追試になるかもしれないと気づかないうちに恐怖心を抱いていたのだと思います。不合格や追試という現実を突きつけられたときに実力が乏しいことが表にさらけ出され自信を失ってしまうのではないか、それによって発言力や説得力は失われ信頼もなくなってしまうのではないかと、起きてもないことを恐れ負の連鎖を想像していました。経験がまだないから、自信はないし何も成しえていないからと、自分だけの小さな世界に閉じこもり少し満足し飛び出すことができずにいました。
 その小さな世界に聳え立つ大きな壁(私にとっては)から出て新たな世界へ飛び込もう、新境地を開拓しようと決断できたのは、自ら描く『西野誠』の理想の40歳像の立ち位置はここなのかという自問自答の繰り返しと2023年、まさに無力だった自分への変革を求めたからだったと思います。

 ここからは今年のスローガンである『打破』が自分にリンクし物事が進み、これまでの自分を『打破』し、新たな世界へとサッカー追及の旅が始まりました。それでも不合格だったらどうしようという目に見えない怖さはすぐには拭い去れず頭の片隅にはそのフレーズがちらつきました。前期の講習会の実践を終えた後、S級ライセンス保持者であるチューターや同期の受講生から指導の評価を受け、辛口なコメントももらい私の現在地を知ることができました。チームに戻り、手応えと正解のない指導の狭間で葛藤を繰り返しながら鍛錬を積む中で選手たちの成長が私に大きな自信を与えてくれました。トレーニングに弱音を吐かず一生懸命に取り組んでくれる姿、チャレンジしようとする姿勢、気迫、情熱のこもったプレーを吉田主将を中心にBチームの選手たちが体現してくれました。そして何よりもそれが結果へと繋がっていくのが目に見えてわかり、躍動する選手たちのプレーや必死に戦うギラついた眼を見て少しづつ私にも自信がわいてきました。選手のおかげです。そこからは恐怖心が脳裏によぎることは格段に減りました。最大限準備してあとはなるようになると。不合格だろうと追試だろうと、また学ぶ機会が与えられたと思い頑張るだけ。とマインドが徐々にセットされていきました。

 もう一つ私に起きた大きな出来事はAチームのリーグが佳境を迎え1部昇格が勝敗によって大きく明暗の分かれる大阪教育大学戦の週にありました。スタッフ間で昇格に向けてどう思っているのか、この大一番をどう捉えて臨んでいるのか、全身全霊で臨む準備はできているか話をしました。A級ライセンス講習会の受講やBチームの選手たちの成長から自信を得ていましたが、どこかで慢心し過信寄りの行動と言動になっていたのではないかと気づかされました。私が指導者として大事にしているのは刺激を与えられる指導者であること、選手、監督、スタッフ、マネージャーをしっかりと支えるに徹するということです。それを疎かにしている自分、大学やスポンサー、地域の方に支えられて今の自分があることの感謝を忘れていることに気づかされハッとしました。40歳を迎えている大人として胸の深くまでえぐり取られるというかぶっ刺さる言葉を突き付けられ、ハッとしたこの感情と『人生』を熟考することとなったこの時間と言葉は重要なものでした。決してネガティブではなくポジティブな言葉で40歳にしてこうした思いを抱き考えるきっかけを与えてくれる環境があるのは本当に恵まれていると改めて感じることができました。気づきを与えてくれる監督やスタッフ、そして選手に出会えて本当に人にも恵まれているなと、この環境を大切にしていこうと思いました。

 この2つの刺激的な出来事から学んだことは『失敗は全く怖くない。迷わずチャレンジする!!』、『気づきを与えてくれる人、環境を大切にする!!』。当たり前かもしれませんが非常に重要な2つです。私は経験したからこそ断言できます。チャンスを選ばずチャレンジしようと。失敗は怖くないです。チャレンジして簡単に成功するかもしれないですし、失敗して足踏みするかもしれません。失敗したとしても現在地を知ることができそこからまた進むことができます。その失敗が次の新たな学びにつながると。間違いなく成長につながると信じて。マインドセットする。

 最後になりましたが、この1年を通して、チームを取り巻く多くの人々の支えを改めて感じました。スポンサーである株式会社デイリーエッグ様、赤穂化成株式会社様、いつも多大なるご支援とサポートをありがとうございます。この場をお借りして感謝申し上げます。そして日々練習環境を整えてくださる方、事務的なサポートや支援をして下さる大学関係者の皆さま、本当に多くの方々に支えられて今があります。ありがとうございます。

 2025シーズンは今シーズンで得た経験と反省を糧に、さらに高みを目指していきたいと考えています。間違いなく今シーズン以上に厳しい戦いが待ち受けているでしょう。しかし、どのような困難があろうとも、選手たちとともに一歩ずつ前進していきたいと思います。2月には新たな選手たちを迎え、再び新しい物語が始まります。その日を心待ちにしながら、今は一旦シーズンを振り返り、次の一歩への準備を進めていきます。

 これからも大学サッカーという舞台で、夢と感動を届けられるよう、努力を続けてまいります。どうぞ2025シーズンも変わらぬご支援をよろしくお願いいたします。

                                   ヘッドコーチ 西野 誠