早いもので年の瀬も押し迫って参りました。2022年は、本学サッカー部が関西学生サッカーリーグに加盟した第93回から数えて8シーズン目、記念すべき第100回という節目の1部リーグにおいて初の残留を決めることができました(最終順位7位)。また、シーズン前に目標に掲げた総理大臣杯には2大会連続で出場することができ、初めてのJリーグ内定選手も誕生しました。総理大臣杯では1-5の大敗を喫し、チームとして指導者として大舞台の厳しさを思い知らされましたが、その敗戦から多くの学びがあって後期リーグに好影響を及ぼしたと感じます。私自身2度目の昇格となった1部への思いや執着は人一倍強く、過去のOB達が残してくれた結果を無駄にしないこと、そして未来につなげていく覚悟でシーズンを戦い抜きました。

 開幕当初は思うように勝点を積み上げることができず、5月25日の初勝利を手にするまでは非常に長く険しい道のりでした。しかし、迷いながらも内容に手ごたえを感じずにはいられず、チームの武器を全面に押し出して果敢にチャレンジし続けました。初勝利をきっかけに勢いが増し、昇格したチームとは思えないぐらいどの相手にも互角に渡り合える力を発揮しました。そんな刺激的な試合では常に課題と収穫があり、我慢強く振り返りと働きかけを継続することで勝利の可能性を広げてきました。シーズンを通して活躍した選手、数少ないチャンスでチームの勝利に大きく貢献した選手、悔しさを秘めながらもチームのために動いた選手、様々な状況下で自分ができる役割を理解して行動できる選手が非常に多かったと思います。むしろ、そうしないと戦えないリーグであったからかもしれません。チームが大きな力を出す瞬間とは、まさに全員が同じ熱量で向かうべき場所へ進み、自らの意思で掴みにいく強い覚悟が表れる時です。今シーズンはそんなエネルギーや覚悟が感じられた試合が数多くありました。一方で、チームや組織は常にいい状態、円滑であるということはなく、時には自己都合を優先したり不満や納得のいかない感情をコントロールできずにふさわしくないはけ口から表に出てしまったりすることもあります。そこがマネージメントの難しい面であり、直面するたびにそれぞれの感情や主張を慮り、私が下した決断についていつも考えさせられました。考え抜いた先には、指導者としてチームが目指すべき方向を示しながら選手の胸のつかえや悩みを解消するモチベーションへの働きかけとともに、必要に応じて現実を突きつける厳しさも持ち合わせなければならないと感じました。自身の振る舞いがチームにいい影響を及ぼすのか悪い習慣へと誘うのか…判断基準はとてもシンプルで、常にその基準を意識して指導してきました。もちろん失敗や後悔はこれまでにたくさんありましたが、変わらない信念を貫くからこそ選手に対しても強く求められる部分があるのだと認識しています。しかし、周囲にいる人たちが自分の信念(意見、意思)を尊重するばかりになると確証バイアスに陥ってしまう危険があることを忘れてはなりません。時には意思の微調整、異なる選択肢の可能性、決断の逆行を示してくれる周囲との信頼関係が重要なのだとこの年になって学ぶことができました。

 組織が大きくなるにつれて一人一人の考えや意見が食い違うのは当然ですが、全員が同じ判断基準をもとに活動することができればもっと愛される組織、選ばれるクラブに成長していくと思います。それこそが私の目指す未来の姿で、「ちょっとくらい…俺だけならいいか…」というように、100人を超える大きな集団が少しずつ組織を蝕めば見かけだけの『砂上の楼閣』となり、「チームのために…みんなのために…」と100人が成長や発展のために動けば『堅実な組織』となります。一人がもたらす影響は良くも悪くも非常に大きく、渦を巻くように周りを巻き込んでいきます。

 チームづくりと組織づくりは同じようなもので、試合当日あるいは前日(その時)だけ頑張って成果が得られるほど簡単ではなく、一朝一夕にはいかない日々の積み重ねが何よりも大切です。いくら目先のためだけに特別なことをやったところで、日常の濃さには到底かないません。目指す未来の姿…サッカー部の理念「選手の成長→クラブの発展→選ばれるクラブに」…に思いを巡らすことで意欲やひらめきが得られるのかもしれません。理念とは存在意義であり、立ち返る場所であり、原点の思いを届ける最終目的地でもあると思います。



課されず、課す。


 誰かに課されるのではなく、自らに課すことで道は拓け、力強い一歩が踏み出せます。課すということは、きっかけは外からであったとしても最後は自分自身で意思表示、意思決定をしていくということです。このように、思いや意思があるところに成長があり、成長のあるところにイノベーションが生まれると思います。指導者も同様に、課されるだけでは自分のものにはなりません。信念をもって自らに課し、自身の成長が組織の発展につながると信じて日常を追求していくだけです。

 本学サッカー部は、今シーズンも本当に多くの方にご支援ご声援を賜りました。温かいご支援やご声援によって選手たちは躍動し、日常のハードワークを堂々と試合で発揮することができました。大舞台の見えぬところで関わってくださっている方々を忘れないこと、その感謝の気持ちをもって戦ってくれた選手・スタッフにも心から感謝しています。
 お陰をもちまして1部リーグ7位(過去最高成績)を記録し、総理大臣杯への出場も果たすことができました。この場をお借りして心より御礼申し上げます。
 来シーズンもどうぞよろしくお願いいたします。




監督 中田洋平