サッカーとサッカー以外と大学生と

　いつも関西福祉大学サッカー部を応援していただきありがとうございます。
　GKコーチ兼C2チームコーチの那谷です。

　トップチームを含めたすべてのカテゴリーの公式戦が終了し、間もなく2022年が終わろうとしています。振り返ってみればGKコーチとC2チームコーチとしてのふたつの役割が、自分にとって全くの対極にあったシーズンでした。

　まずGKコーチとして振り返ります。
　今シーズンはどのGKも難易度の高いビルドアップへの挑戦や、チームを勝利へ導く「勝てるGK」となるための取り組みなど、練習から試合に至るまで本当によくやってくれたと思います。
　GKはそのポジションの特性上試合に出られるのは一人だけで、怪我等の不測の事態がない限りは途中出場すら簡単には行われません。また、サッカーの中で唯一手が使える特殊なポジションであるがゆえに、GKはGKしかできないことがほとんどです。ポジション争いだけで見れば、FP（フィールドプレーヤー）以上に厳しい世界かもしれません。ここにGKが様々な意味合いを持って難しいポジションとされる所以があります。しかし、そのような厳しさにあっても、今シーズンのGK陣は与えられた立場の中で高いモチベーションを維持し、持てる力を尽くしてくれました。例えばAチームでは、2年生ながらチームの精神的支柱として活躍した清原をはじめ、リーグ戦初勝利に貢献した4年生の宮本。総理大臣杯出場が懸かった大一番で、初出場ながら勝利に大きく貢献した2年生の大月など、それぞれが役割を全うしチームに大きな成果をもたらしてくれました。他のカテゴリーでも、サブの選手が常に向上心を持ち、かつ積極的にスタメンをサポートしてくれたことで、シーズンを通して質の高い競争ができていたように感じます。
　今年は昨年に続き「勝てるGK」としてチームを勝利へ導くために必要な行動を選手に求めてきました。ただシーズンを終えて思うのは、ピッチに立つGKがどう在るべきかだけではなく、ピッチに立たないGKがどう在ろうとするのかにこそチームを勝利へ導く「勝てるGK」に必要な資質が詰まっていたのではないかということです。来シーズンは試合の勝敗に直結する「勝てるGK」を追求していくことだけでなく、試合に出る出ないに関わらずチームを勝利へ導くような存在になれるよう、GK陣全員でもう一度挑戦していきたいと思います。

　GKコーチとして幾らかの手応えを掴めた一方で、C2チーム担当コーチとしては非常に難しいシーズンを過ごしました。「Iリーグ2勝以上」というシーズン目標が達成できなかったこともそうですが、何よりもチームの目指すべき姿が定まらなかったからです。
　大学サッカーは強化（結果と競技レベル）と育成（結果によらない向上と教育）のバランスが非常に繊細な種別です。プロサッカー選手のように高い競技レベルが求められる年齢ですが、学生という立場上勉学などサッカー以外の面でも高い資質が求められます。（決してプロサッカー選手が学ばなくていいという意味ではありません。）また、4年間の大学生活でサッカー以外に目を向ける機会も増え、自分の将来が明確に形作られる時期でもあります。就職活動や勉強との両立、モチベーションの変化と方向性の違い、私生活とのバランスなど、今年のC2チームには、そんな大学生の生々しい部分がはっきりと映し出されていたように思います。だからこそ一度チームの在り方を見詰め直す必要がありました。
　私は人が成長するためには、その人自身が心の奥底から変化を願うこと（内発的）、自分を変えなければ生きていけないような極限状態に追い込まれること（外発的）の2つが必要だと考えています。どちらにも共通しているのは、サッカー部の基本理念にもある「情熱を注ぎ、本気で取り組む」ということです。本気で取り組むことができれば人はどんな環境であっても成長できます。そのために今ある環境で、自分が情熱を注ぎ本気で取り組めるものを見つけ出すこと。例えば、自分自身のプレーに全力を注ぐ、主将などの役割からチームを支える、後輩の指導・育成に注力する、仲間のプレーを観て応援する、地域へサッカーを通して貢献する。「ピッチに立っていないGKこそ大切」と前述したように、トップチームに所属していない選手が情熱と本気を発揮できることこそ、チームの底上げと成長につながるとそう思います。
　であれば、C2チームを担当する私が為すべきことは、選手の種々様々な情熱が存分に表現できる環境を作り、本人やチームがより良くなる方向へ導いていくことではないでしょうか。今さら何を当たり前のことをと思われるかもしれませんが、このことを自分で考え、自分の言葉にできただけでも、私にとって非常に大きな学びでした。
　関西福祉大学サッカー部のC2チームだからこそ、何ものにも縛られることなく、より自由に、しかし誰よりも情熱的でひたむきに努力を重ねられる。そんな環境になる日を目指してまた来シーズンを迎えたいと思います。