総理大臣杯に初出場した昨年の結果を超えるべく、2大会連続出場の切符を手にして臨んだ今大会は、1-5という大差で1回戦敗退、あっけない幕切れとなりました。もちろん、思った通りの結果を得られるほど簡単な世界ではなく、人間がプレーするが故の目には見えない不穏、動揺、不安、焦燥といった少しの心境の変化が流れを変え、歯車を狂わせ、試合を動かした90分だったと感じます。
3年ぶりの関西1部リーグ復帰となった今シーズン、残留ではなく上位進出を本気で狙い、積極的に主導権を握る姿勢を貫くために『果敢』というスローガンを掲げて走り出しました。開幕当初は勝点を積むことができずに苦しんだ時期もありましたが、初勝利を機に浮上のきっかけをつかみ、どの大学を相手にしても引けを取らない内容で手ごたえを掴んできました。その自信から関西選手権でも流れに乗ってベスト4まで勝ち進み、全国への挑戦権を獲得したのでした。
今年のチームは結束力や一体感があり、ピッチ内外で互いに協力しあう姿勢がこれまで以上に見られます。そんなチームだからこそまとまった時の波を逃さない勢いや迫力が試合でも強みとして表現されています。一方で、昨日の試合でも露呈した相手の時間を断ち切るメンタリティ、流れを自ら引き戻す働きかけ、鼓舞、奮起…これらに物足りなさを感じたのは確かです。冷静にゲーム分析をし、自分ができることに力を注ぐことはとても重要ですが、突き抜けた結果や記録を残すチームには必ずと言っていいほど強烈なリーダーシップを発揮する選手がいます。どんな時でもチームの指針となり、戻るべき場所、進むべき道を示して先頭に立つピッチ上のリーダーです。調子がいい時は誰でも積極的に、思い切ってチャレンジするものですが、それは本当の実力ではないと考えています。『不調こそ我が実力』…調子が悪い時を基準にすれば、少し調子が良くても変に浮かれたりはせず、悪い状況にあってもそれを素直に受け入れ、しかるべき行動がとれるのだと思います。しかし言葉でいうほど簡単なものではなく、失点やミスで空気が変わってしまうのは事実です。そこで、ピッチに視線を落とす選手から顔を上げて取り返す姿勢を見せる選手、周りに声をかけて戦う意思を見せる選手が11人になれば、このチームは劣勢でも試合をひっくり返したり、さらに安定した強さを発揮したりすることができると感じます。
監督として、そのチームの良さや強みを引き出せなかったことに強い後悔と申し訳なさが残りました。この華やかな舞台まで進むことができたのは、主将の道前をはじめとする4回生のチームづくり、マネージメントのおかげです。昨年の成績を超えることはできませんでしたが、このチームにはまだ1部リーグでのチャンスが残されています。そして、選手にも関西福祉大学サッカー部にも終わりはなく未来があります。昨年初めて見ることができた総理大臣杯の景色を、2大会連続で関西の代表として出場したことで、全国の扉を開く可能性を示すことはできました。その扉を続けて開いたからこそ、見えない景色ではなくなったからこそ、その先へ進む力をつけていかねばなりません。
一つのことに没頭すること、熱中することで不安になる人がいるかもしれません。「これだけやっていて大丈夫なのか?」、「他のことをやった方がいいのでは?」と。考え方はひとそれぞれですが、青二才の私が経験した中ではっきり言えることは反対で、そのように感じている時点でそもそも没頭している、熱中しているとは言えません。自分が決めた一つのことに懸けた分だけ他の人より得るものが多く、懸けた分だけ力がつくということです。チームに関わる人ではなく、当事者としてつくる人になることでチームの見え方も変わってくると思います。
懸けるのか懸けないのか…懸けるには覚悟も時間も必要です。私は関西福祉大学サッカー部創設時から変わらずに、そしてこれからもこのチームに懸けます。懸けた分だけ得られるものがたくさんあるから。
最後になりますが、この総理大臣杯を迎えるにあたり、本当に多くの方にご支援、ご協力、ご声援をいただきました。差し入れや激励のお言葉を頂戴した大学関係の皆様、本学サッカー部OBの皆様、本学サッカー部スポンサーの皆様、赤穂市内の地域の皆様、最高の環境を整えてくださった名鉄観光サービス株式会社様、そして安心安全な運営をしてくださった全日本大学サッカー連盟の皆様、対戦相手の新潟医療福祉大学の皆様、この場をお借りして心より御礼申し上げます。
誠にありがとうございました。
監督 中田洋平