山々の木や街路樹は落葉し、その幹の下は色づき栄養を蓄えていく様子が見られ、頬をすり抜ける風が刺すように冷たく感じ、寒波が到来する季節となりました。時間の流れは早いもので2021年がまもなく過ぎ去ろうとしています。
 今シーズン2部リーグでは幸先の良いスタートを切りここ一番で強さを見せ1部復帰!関西選手権では準優勝し初の総理大臣杯出場!!Iリーグでは死のグループ(勝手に名づけてます)を勝ち抜き年間総合優勝チーム決定戦進出!!!
 素晴らしい結果を出しスローガンである『進化』をものの見事に象徴するシーズンとなりました。
 今年はスポンサーである株式会社デイリーエッグ様、大学関係者の皆さま、本学サッカー部を応援してくださる全ての方々によるサポートのおかげで様々な苦難を乗り越え目標を達成することができました。この場をお借りして感謝を申し上げます。本当にありがとうございます。
 さて、これから2021シーズンを振り返っていくのですが、今シーズンの躍進を振り返るうえでやはり外せないのは2020シーズンの結果です。私が指導しているBチームはIリーグで惨敗を喫しました。1勝しかできず、1部の強豪大学に力の差をまじまじと見せつけられ奈落の底まで突き落とされました。心も体もずたずたに引き裂かれたような感覚の中に希望の光が少し見え隠れする状態でシーズンを終え、2021シーズンに向けての準備に取り掛かかったのを今でも鮮明に覚えています。今年の目標は2020シーズンよりも勝つ試合を増やすというあまり魅力を感じないモチベーションのグッと上がらない現実的な目標でした。自分でも安易に考えたわけではないのですが、知らないうちに自分の中で大敗を恐れていたのかなと感じます。現実をみて決めたともっともらしい言い訳を並べて保身に走る術を選んでいたのかもしれません。現実は受け止めつつも何かしっくりとこない引っかかりがあり、これでいいのかといつものごとく自問自答を繰り返しました。Bチームにとっての最善は何なのか?と考え続けました。考えた末にたどり着いたのは日の目を見る、日の目を浴びる世界にBチームの選手を連れていくということです。また負けても仕方ないというイメージの脱却と負け癖を勝ち癖へとひっくり返す方向にもチームを進めていこうと決意しました。
 本質目標、目的が明確になった瞬間にやらなければならないことが自然と頭の中を駆け巡りそこに素早く着手しました。トレーニングの構築、トレーニングマッチの相手探し、公式戦を迎えるまでの強化策、メンバー選考、采配、トレーニング・試合後の振り返り、戦術の勉強など今まで以上に細部にこだわり考えて考えて考え続けて様々な答えを導き出していきました。常に自分に問いかけたのは『チームにとって最善は何なのか?当たり前を当たり前にできているのか?(凡事徹底)』。この二つはブレない軸となり迷いのない決断につながりました。『これしかない!!』というものを選ぶことの重要性を再認識することができ、選択の基準を厳しくすることで脳の機能の精度と説得力が増していくのを実感しました。トレーニングや試合で特別な何かを要求したことはなくごくシンプルな要求がストレートに伝わり選手たちがそれぞれの強みを発揮し、連係にも磨きがかかりチーム全体のレベルを少しずつ引き上げ、一歩一歩と歩みを止めず完成度が高まっていきました。
 PKという絶体絶命のピンチをしのぎ勢いに乗った開幕の関大ULTRAS戦、身体を張って守備しシュート2本で勝利を手繰り寄せた大阪体育大学戦、10人から劇的な逆転勝利を収めた甲南大学戦、後半ラストワンプレーを仕留めリーグ突破に弾みをつけた大阪学院大学戦、引き分け以上でグループリーグ突破が決まる桃山学院大学戦と数々の劇的勝利とゴールを生み出しました。また粘り強い強固な守備の構築により失点数を大幅に減らすことに成功。0-0のスコアをキープしたまま試合を進めることで十分戦えるという自信を掴んでいきました。どちらに転ぶかわからないアドレナリンを刺激する試合を数多く展開し少ないチャンスをものにする勝負強さを幾度となく発揮しました。選手たちの試合にかける思いは2020シーズンにはない熱さがあり、勝つことへの執念を感じました。選手たちの勝利への渇望がこうした結果につながったと思います。仲間と共に全力で戦って得られる達成感、勝つ喜び、歓喜の瞬間に訪れる快感を分かち合い、勝利するたびにチームにさらなる一体感が生まれ、そして劇的にパワーアップしていく選手たちの姿に感動しました。結果が出るたびに様々なことに熟考し悩んでよかったと嬉しく思う反面、また勝たせなくてはならないというプレッシャーがのしかかり試合終了のホイッスルを聞くまでは指導者人生の中で心が一番浮足立ちました。それでも間近で感動的な試合をたくさん観ることができ、多くの経験もでき本当に充実した幸せなシーズンだったと思います。Bチームの選手が日の目をみる、日の目を浴びる世界の入り口の少し先まで導くことはできたかなと思います。一つ結果を出すことができ、今年やってきたことは間違いではなかったという確信と大きな自信を得ることができました。ただ間違ってはいなかったけれども全て正解だったとは思っていません。なぜならまだ道半ばだからです。ここまでの経験をさせてくれた選手たちには感謝してもしきれないくらいの思いでいっぱいです。

 人生の中での失敗は成功に向かうための過程の一つにすぎません。ただ過程だからと言ってそこを軽視してしまうとさらに大きな過ちを犯してしまうことになります。昨年私はそこを強く感じました。そこから失敗を認めることにしました。失敗を認めることは恥ずかしいことではありません。失敗を認めることは自分が以前よりも賢くなったことを意味し成功に向かうと信じています。自らの失敗を認めたとき、はじめて失敗は過去のものになる。失敗した事実を否定する人、受け入れることができない人は決してそこから抜け出せない。まずは失敗を認め受け入れる。この何気ないシンプルで当たり前の作業が今年の躍進につながったと思います。失敗を受け入れない自分、負けても仕方ないグループにいるからという言い訳、プロサッカー選手を経験しているからという過信、慢心からくる指導、他にも様々な失敗があったからこそ自分が成し遂げたいものが何なのかが完全に明確になり、スイッチが切り替わった気がします。2020年の失敗は私の指導者人生にとって最も大事なことをあぶりだして不要な部分を排除するためのきっかけになり大きな力となりました。

 2021年に何度も行きつく先はここです。『チームにとって最善は何なのか?当たり前を当たり前にできているか?(凡事徹底)』
 これからもしっかりと見極めて不必要なものは捨てる勇気も冷酷ですが必要なのかなと感じます。そうしなければ本当に重要なものを考える、する余裕がなくなると思うからです。自分に何ができるのか、どの問題と向き合うのかこれからも見誤らないようにしていきたいと思います。

 いつも反省や課題修正の話ばかりですが、一つできることをやり遂げたということで選手たちを本当に称えたいです。そして自分に対してもしっかりと褒めてあげたいと思います!決して満足しているわけではありません。満足したら終わり。そこからものすごいスピードで衰退が始まりますから。選手を称え、自分を褒めて次の歩みを始めたいなと思います。ただ少しサッカーから離れて心と身体を休ませたいと思います。

 新たなる挑戦のために!

 皆さま、良いお年をお迎えください。

    コーチ 西野 誠