2021シーズン、『進化』というスローガンを掲げ、2部リーグ優勝(1部昇格)と総理大臣杯の出場を主な目標にして走り始めました。結果としては、総理大臣杯の初出場(2回戦敗退)、2部リーグ2位(1部昇格)と一定の成果をあげることはできましたが、そのような結果としての収穫とともに同じだけの失敗、学びがあったシーズンだと振り返って感じます。

総理大臣杯の初出場は以前にブログで記した通り、チームとしてまだ見たことのないステージに立つことで得られたものが非常に多かったこと、その大舞台ではチーム一人一人が背負うもの、感じる責任感やプレッシャーが大きくなるにつれて選手自身も同じように成長していくこと、この2つがとても印象に残っています。同時に勝てそうな試合、手ごたえのある試合でもほんの少しの歪みや綻びで勝利が零れ落ちていくサッカーの難しさ、厳しさを痛いほど経験しました。そんな刺激的で目まぐるしい夏が過ぎ、残されたもう一つの使命である1部昇格を実現するためにチームは再び走り出しました。が、そこで待っていたものは「総理大臣杯出場チーム=優勝候補」ではなく、相手チームの最大級の警戒と対策があること、トーナメントとリーグ戦はまったく別物であること、でした。それはもちろん当然のことではありますが、自分たちのいいイメージだけが先行して思い通りにならない試合を勝点につなげられなかったり、試合の中止・延期が繰り返される中で不規則なレギュレーションにコンディションをうまく合わせられなかったりと、ここでも試合に勝つことの難しさと重みを痛感しました。しかし、今年は敗戦後に立て直すチームの修正力が光り、連敗は1回のみで、上位チームにも勝点3以上を積み上げるといった昨年の反省を活かした結果が1部昇格につながったと言えます。

そして、今年の『進化』というスローガンにふさわしい組織の成長が見られた背景に、スポンサー契約という契機なくしては語れません。サッカー部のこれまでの活動や実績から話が進み、スポンサーが関西福祉大学サッカー部を選んでくれたという経緯は、クラブ理念である『選ばれるクラブに』を一つ実現できた証明となりました。これは、組織が一歩進んだことを示すと同時に、サッカー部のステークホルダー(利害関係者)が増え、いいことも悪いことも自分以外に影響を及ぼす関係者が増えたことを意味しています。スポンサーが私たちをご支援してくださるように、私たちサッカー部もそれに応えるべく、できることに一生懸命取り組み、活動と結果でお返ししていく自覚や責任感の基準を高めていく必要がありました。その結果、組織にいることを目的にしている人から組織のためになることを目的とする人が増え、主体性への加速が進んだと受け止めています。

世界を襲った新型コロナウイルスの波が収まらない中で、試合は開催されるのか、リーグ戦は成立するのか、いつ区切りがつくのか、といったスケジュールや規定に対するイレギュラーが多く、一抹の不安を抱えて走ってきたシーズンでした。結果が出なかった時は厳しい言葉をかけられたり、自信がもてなくなったりしましたが、逆にそれがエネルギーとなり自らを奮い立たせる原動力に変わりました。自分への戒めを込めて言うならば、「自分は努力をしている」と思ってする努力はそれではなく、見返りや評価を求める目的に変わっていき、自己都合によって一喜一憂する。その先は続かず、小さく収まってしまう。そうではなく、努力をしているとも思わずに努力をしていることに意味があるのではないだろうか…そう感じた一年でした。

指導者になって7年目のシーズンが終わろうとしますが、未だに手ごたえと失敗、自信と過信の繰り返しです。指導に完成形はなく、時代とともに科学が進歩し、思考が変化(進化)していく様は、まさに有為転変。サッカーは人生の縮図だと言われることがありますが、それは次に何が起こるのかという相手の動きとゲームの流れを読む力が、世の中の流れを読む力につながるからだと思います。そんな一歩先を行く『先見の明』が準備を生み、成長を促し、道筋を示してくれます。一人の人間ができることはごく限られたもので、だからこそ一人の指導者として向上心が湧き上がる、危機感を持たせる働きかけができるようになりたいと考えています。相手への刺激が自分へのプレッシャーになり、経験になると信じてこれからも愚直に取り組んで参ります。

本学サッカー部への温かいご支援ご声援、誠にありがとうございました。

来シーズンもどうぞよろしくお願いいたします。

中田洋平