8月17日~20日 富山合宿

8月21日~27日 総理大臣杯(23日初戦、26日2回戦)

昨日の総理大臣杯2回戦(vs産業能率大学)敗退により、本学サッカー部初めての全国大会の挑戦は幕を閉じました。全国という大舞台でも初戦(vs札幌大学)からエンジン全開でボールを動かし、ゴールに迫り、幸先良いスタートで勝利を飾ることができましたが、ベスト8をかけた2回戦では均衡した展開をものにすることができず、延長を見据え始めた試合終了間際の1プレーに沈められました。勝負は時に残酷で、そのチームの続きを強引に奪うかのように急に終わりを告げてきます。そんな儚くも美しい90分にすべてをかけ、身を粉にして取り組み、精根尽き果てるまで叫んで走る・・・人の心を大きく揺さぶるサッカーというスポーツに、今回もまた多くの学びと勝負の厳しさを教えられました。

90分のうちの一瞬で決まるこの戦いのために、チーム全員がサッカーに向き合い、長い時間を費やして準備をしてきました。選手はもちろんのこと、スタッフの分析やビデオ編集、トレーナーのケガの対応やコンディショニング、マネージャーのあらゆる面での管理や調整、そして地元や関係者の方々による物品提供や差し入れなど、ピッチに立つまでに数え切れないほどのサポートを受けて臨んだ大会でした。大きな舞台、華やかな舞台になればなるほど陰で支えてくれる人が増え、その舞台にかかる『見えない価値』と『勝利することの価値』が大きくなります。試合前のミーティングでは、自分たちからは見えない努力や見えないサポートがあることを忘れずに戦うこと、そしてそれらを感じることでプレーの重みが変わることを伝えました。また、西野コーチと吉川コーチの分析ミーティング、那谷コーチのモチベーションビデオ、四六時中寄り添ったトレーナーの貢献、マネージャーのピッチ内外(登録や申請など)の緊張感が続いた遠征帯同など、見える努力やサポートも近くで見てきたからこそそれらすべてが報われる結果を求めました。そんな言葉をかけた時の選手は真っ直ぐで力強い目をしており、覚悟を決めている顔つきでした。

 ここから先のまだ見ぬ世界へ、ベスト8へ全員が死力を尽くしてチャレンジしましたが、あと一歩、あと一点が遠く重くのしかかった試合となりました。しかし、選手が戦うピッチの一番近くで見ていた私が目にした光景は、今までとは比べようのないぐらいにボールと勝利に執着しているイレブンの姿でした。大舞台は背負うものが大きくなるだけでなく、選手の可能性を広げる場所でもあるのか、と興奮しながらテクニカルエリアに立っていました。まさに、厳しい戦いと刺激的な環境でプレーしながら進化している瞬間でした。今までなら自分都合で決めて動いていた一歩が、チームのために動かす一歩に変わり、自らの意思で道を切り拓こうとする強烈なエネルギーを感じました。

 求めた結果を手にすることはできませんでしたが、試合が始まれば誰にも邪魔されることのない『ピッチ』という聖域に最高の状態で立つために、ピッチ外で一番気を張って生活していたのは選手たちです。生活を一変させたコロナウイルスの影響から、大会に出場するために多くの規程に縛られ、自制し、制限を受けてきました。出場辞退のチームが出る中で、チーム全体で厳しい対策を徹底して無事に2試合を迎えることができたのは、当然のことでありながら他でもない選手みんなで進んできたプロセスを大切にしてきたからだと思います。すべては試合のために・・・そんな、サッカーに真摯に向き合うこととピッチに立つために基準を上げていくことの重要性も教わりました。なんと言っても、最後は選手のハードワークに、2試合にかけたその情熱に心から賛辞を送りたいと思います。

 2回戦敗退という結果は、望んでいたものではなく誰もが悔いの残る結果です。特にピッチに立てなかった選手やベンチから声をかけ続けた選手は後味の悪さが残ったかもしれません。私も同様に、みんなの思いを乗せてもっといい景色を見せてあげたかったし、もっとこの場所で戦って成長したいと思って戦いました。それが結果として伴わなかったこと、これだけのハイパフォーマンスで勝利に結びつけられなかったことに責任を感じています。ただ、今の自分の最大限を表現して指揮を執ったうえでの結果なので、力不足を受け入れるしかありません。だからこそまたその壁を目指して戦い、何度でも挑戦してこの最高の舞台に戻ってきたいと思います。

不満を口にしても何の解決にもならず、満足感を得られるわけでもありません。ただ単に棘を吐き出せばその棘が表情に現れ、自ら良いものを手繰り寄せることはできなくなります。言い訳や御託を並べても状況が変わることはなく、起きたことに対して自身で咀嚼できるかどうかが重要だと考えています。すべては受け入れることから始まり、その瞬間に味わう屈辱や悔恨あるいは喜びや達成感といったものはそこで終わります。そして次に何が訪れるかは、歩み出す自身の一歩で決まると思います。だから快楽も苦痛も安堵も憂慮も一瞬でいい。その場で味わって、次に進んでいく。辛いことほど引きずったり切り替えられなかったりしますが、それだけ懸けていたということであり懸けていた分溢れただけです。たとえ時間がかかったとしても、最後に変われるかどうか、変わろうとするかどうかは自分次第です。

総理大臣杯初出場を決めた試合(7月18日)から昨日の本大会2回戦までの約1ヶ月半は、本当に目まぐるしく過ぎていきました。

「次こそは」と言い聞かせて、全国大会の扉を開いてくれたチームに感謝して、ほんの少し休んで、もう一つの目標である1部昇格を実現したいと思います。

今回の総理大臣杯を迎えるにあたり、ご支援ご協力いただいた関係者の皆様、また、このような状況にも関わらず安心安全な大会を運営していただいた全日本大学サッカー連盟の皆様、この場をお借りして厚く御礼申し上げます。誠にありがとうございました。

監督 中田 洋平