寒さも増し、樹々の葉が空風に吹かれてグラウンドには紅葉の葉が散り始め、冷たい風と共に本格的な冬が近づいてきました。11月ももう終わり・・・。
 今年は新型コロナウイルスという未知の感染症が猛威を振るい、当たり前の日常を奪っていきました。4月から部活動は停止し、2か月半もの間、サッカーから離れる生活を送りました。これだけサッカーから離れることは人生初の出来事で不安や寂しさというネガティブな感情もありましたが、こういう経験や時間も無駄にはできない!今年の目標である何かをする、できないことをする、考えてするにもってこいやんと自分自身は意外とポジティブだったかもしれません。新しい生活様式の中で、サッカー以外に時間をかけることができたのは自分にとって貴重な経験となりました。特に家族との時間ができ子供たちと思う存分に過ごせたのは本当に幸せな時間でした。

 さて、本題のサッカーはというと、2か月半の自粛期間を経て6月中旬ごろから本格的に始動していきました。再開後に再度停止することもありましたが、9月中旬から始まるIリーグに向けて着々と準備を進めていきました。今年はコロナの影響でレギュレーションが変わり試合数は7~6試合に減りました。4年生にとって最後の大会となるので今ある力を最大限に引き出し、選手たちが7試合に全力を注げるような準備を心掛けました。
 コロナで活動制限がかかり練習試合など実践的なメニューはなかなか組めない状況でしたが、できることを見つけて取り組み、自信を持ってIリーグの開幕を迎えました。昨年を上回る結果を残したいと考えてIリーグに臨みましたが、結果はBチームが1勝1分5敗の8チーム中7位(勝点4、得点6、失点27)、AB混合チームが1分5敗の最下位(勝点1、得点2、失点16)で惨敗。1部所属の大学にまざまざと力の差を見せつけられました。大量失点での敗戦が続き、試合を迎えるまでのトレーニングの構築はどうだったのか?選手の見極めは?システムは機能しているか?試合前、ハーフタイム、試合後の働きかけは?相手チーム、自チームの分析はどうだったのか?と自問自答を繰り返しました。開幕前に持っていた自信が音を立てて崩れだし、サッカーから、指導から逃げ出したい、週末の試合を迎えるのが怖いと思うこともありました。もっといい結果が出せるはずだと、現実を受け止めず、潔くない言い訳交じりの自分を客観的に見て、指導者としての実力のなさを痛感することになりました。
 当然のことながら週末の試合は待ってはくれず、切り替えて次は勝つのだと全力で準備するしかありません。
『試合終了のホイッスルは次の試合へのキックオフの笛である』とは日本サッカーの父であるデットマール・クラマー氏の言葉です。
 だからこそ目の前の試合がどんな内容であろうと一喜一憂せず前に進む必要があります。Jリーグとは違い中2日などの過密日程はほとんどなく(例外あり)、幸いにも前の試合で出た課題の修正と改善に十分な時間を費やすことができました。その時間を大切にし出た課題に対しての修正は完ぺきとまではいかないが十分できました。選手たちも負け続けて落ちる気持ちを整理し切り替えて、できる限り奮い立たせてついてきてくれたのではないかと思います。
 試合ごとにプレーが整理され、補完し合い、持ち味を発揮しよくなっていく選手たちの姿が観てとれました。
 1試合1試合戦うたびに成長があり、そしてそこに学びがある。毎回異なる学びや、新しい学びがありました。その学びからトレーニングを構築し選手たちの成長に繋げていく。選手たちもその学びに気づき経験に変え自分のものにしていく。試合を重ねるごとにこの循環がスムーズに進んでいった気がします。最後の試合に勝利することができたのは少なからずこの成果が表れたのではないでしょうか。
 
 過去は変えることができません。起きたことはもう起きたのです。悔しいですが、ただただ今年の結果を受け止めるしかありません。これが今の実力だと・・・、自分たちの今いる位置なのだと・・・。
 最上は未来にあると信じて今(指導)に全力を注ぎ、そして、勝つ術と真の自信を選手が持てるように支える努力をもーーーっとしていきたいと思います。
 今年はコロナに本当に振り回されました。新しい生活様式が取り入れられ、社会の在り方も変化しています。時代と共に新しいものを取り入れることは本当に大事なことです。しかし、どんな時代、どんな環境でも変えられないもの、譲れないもの、大事な軸というものは必ずあるはずです。コロナの影響で当たり前のことが当たり前ではなくなってきていますが、本当にぶれてはいけないことはおろそかになっていないだろうか?今年の自分の指導を振り返るとそういった部分を軽く扱っていたのかもしれません。当たり前を当たり前にする部分は選手たちにも徹底して求め、自らも決して見失わないようにしたいです。

 惨敗で苦しいシーズンではありましたが、4年生の一人がこんな言葉を残してくれました。
『 サッカーで悔しい思いもしたけれど、本当にいい経験ができました。 サッカーは技術も大切だけどそれ以外にも大切なものがあるということにも気づかされました。 この大学に来て自分自身が成長できたと今胸を張って言えます。この大学、サッカー部を選んでよかったです。』
 4年間の中で自分と向き合い、目標を持ち、必死で本気で戦ってきたからこそ出た言葉でしょう。ラスト1年の彼の取り組みには本当に覚悟を感じました。
 入部当初は彼がこんな言葉を残すとは正直思いもよりませんでした。今までやってきたサッカーが全てで、こちらの話を素直に聞き入れるタイプではなかった印象があります。いつから彼が変化していったのでしょうか。おそらくこのままではダメだというきっかけがありそれに気づいて自らの『意志』で変わろうと努力したのだと思います。
自ら良い方向に変わる努力をする、行動を起こすことは本当に素晴らしいことです!
 こういった良い変化がみられるから指導は深くて深くて深すぎてやっぱりたまらなく面白い!!
これからもサッカーに真摯に向き合い、志の高い人が満足のいく環境づくりに取り組み、 選手の『意志』の部分に働きかけるコーチングにも一層磨きをかけていきます。
 『真の自信』を手に入れるためにこれからも学び続けたいと思います。


コーチ 西野 誠