「反求諸己」
行いて得ざる者は、皆諸(こ)れ己に反求す。
何か行動をして良い結果が得られない時は、その原因を自分自身に求めて反省する。
昨年の部内における諸問題、1部リーグ最下位による2部降格。チーム・組織づくりの重要性やその在り方について多くの課題を突き付けられた2023年。まずは、その反省や学び、経験から伝えなければなりません。
常にメンバーが入れ替わるチーム内の融合、短期的・長期的視点から全体の底上げを図る仕組み、科学的進歩による数値化されたデータの分析や活用、そして何よりもサッカーという不確実なスポーツにおいて目には見えない最も大切なもの…「尊重、協力、信頼、熱」。これらすべて私自身の働きかけが不十分なまま時間だけが過ぎ、1部リーグの舞台からいとも簡単に降りることとなりました。昨年はまさに「反求諸己」の連続で、部員が思い切って溌溂とプレーできる環境をつくりだすことにもがき苦しみ、試合よりもチーム状況、チーム状態に目を向け続ける日々でした。結果が出ず、チーム状態も芳しくない…濁った水の中を泳ぐような、そんな先が見えない状況でもチームスタッフ、関係者の方々は常に寄り添って私の足元を暖かく照らしてくれました。この時ほど自分の無力さを感じたことはありません。同時に、この時ほど周囲のサポートに励まされ、助けられたことはありません。多少時間はかかってしまいましたが、「反求諸己」と周囲の支えによってギリギリの所で耐え、踏ん張り、自らを奮い立たせた忘れられない2023年を終えました。
ただ、結果を嘆くばかりではありませんでした。どんなシーズンでも学びや収穫があり、悔しいとか悲しいと思うことも大切な感情です。それは本気で向かっているからこそ感じられるもので、それがまた前に進むエネルギーとなって人は成長していくと思うからです。厳しい環境や大舞台で歓喜を味わえるのはほんの一握りで、それ以外のほとんどが失敗や悔しさを経験します。言い換えれば、みな頂点を目指す中で悔しさを学ぶためにチャレンジしているということになります。私はそのような失敗や悔いがさらに自分を磨いていくきっかけになると考えています。間違ってはいけないのが、準備のない、本気でない、覚悟のない見せかけのチャレンジ(流れに身を委ねたチャレンジ)では何も得られないということです。
前置きが長くなりましたが、そんな昨シーズンから今シーズンにかけて、チームの巻き返しと個人的な思いを少し重ねて「打破」というスローガンを掲げました。1部に復帰するだけでなく、さらなる組織化にも手を加えながら継続的発展を目指して動き始めました。革新的なことをするわけではなく、より良い環境で活動ができるように、また部員の帰属意識を高められるようにと、自ら行動し求めるものは部員にも求めました。
トップチームは4回生を中心に、シーズンを通して非常に集中したトレーニング環境をつくりだせていたと感じます。試合を想定した準備、高め合う働きかけ、勝負にこだわる姿勢、それらはサッカーに力を注いでいるという何よりの証拠でした。リーグ戦では取りこぼした勝点はあったものの、着実に勝点3を積み重ね、上位進出に不可欠な連敗しないという敗戦後の修正、改善も見られました。後期リーグを迎えるにあたり、得点力を高めるためのセットプレーの共有・チャレンジを重点的に行いました。夏の遠征や選手だけのミーティングによってセットプレーからの得点が近づいているという確かな手応えを感じ、チーム全体が目標を達成するために同じ方向に進もうとまとまっているのが見て取れました。前期を上回るペースで得点を重ね、後期リーグだけで勝点24、得点34、失点9(後期 最多得点&最少失点)という数字を残すことができました。最終的には優勝した桃山学院大学には唯一勝点を取れませんでしたが、2位での1部リーグ昇格を決めることができました。昇格を課されたチームがしっかりとその任務を遂行する。これは簡単なようで非常に難しく、チーム全員が色々なプレッシャーを乗り越え、責任を果たしてきたからこそつながった結果です。
このように、様々な過程を経て最終的な目標を達成できることもあれば、目の前の一戦に負けることや達成できないこともあります。ただ改めて感じるのは、成長の本質は結果を出し続けることではなく結果を出すためにやり続けることだということです。誰もが億劫だと感じる気の遠くなるような作業をコツコツとやり続けられるかどうか。誰でもできそうなことを、誰もできないほどに時間と労力をかけて続けることで極限に近づいていく…そうして職能が磨かれていく(成長の本質)のだと思います。
時には結果を出さなければいけないこともあります。それが日々の積み重ねと磨かれた職能によって、ここ一番の大勝負をものにできるのではないか、そう信じています。
「反求諸己」を繰り返し、未熟だった自分を受け入れて反省し、また次に進んでいく。同じようなことをやっているように見えても、学びとる意志があれば同じ河を渡ることは二度となく、知恵と知識を集積して自分の可能性を拡げていくことができます。私が出会ってきた言葉に重みのある人たちはみな、常に行動しています。強い意志を持ち、同じ河を渡ることなく、挑戦しています。
昨年、自分の中にあった閉塞感を打破したことで、また新しい自分に気づくことができました。「四十にして惑わず」とはよく言ったものですが、40代のスタートは惑わされながら戸惑いながら1年を過ごして参りました。
来年2025年は、サッカー部創設10周年という節目の年になります。その10周年を関西学生リーグの最高峰1部リーグで戦えることを嬉しく、誇りに思います。
「反求諸己」、本気、挑戦。
創設から突き進んできた10年のバトンを、これまでのように「反求諸己」、本気、挑戦でもって次の10年に繋いでいきたいと思います。
本年も関西福祉大学サッカー部に多大なるご支援ご声援を賜り誠にありがとうございました。関係者の皆様に心より御礼申し上げます。
中田 洋平